【旬菜 蔵】食を通して、地域と未来をつなぐ懐石

2025.12.22

廿日市市上平良に佇む「旬菜 蔵」は、築150年の蔵を改装した趣ある空間で、地元・廿日市の食材を主役にした懐石料理を提供する一軒だ。
店主の友安 健さんは、廿日市市唯一の養豚場・岡村養豚場の豚肉や、無農薬栽培で知られる前川農園の野菜や米など、地元生産者から直接仕入れた食材を使っている。
料理とともに、生産者や食材の背景にあるストーリーを丁寧に伝えることも、この店の大切な役割だ。

「誰が、どう育てたか」を大切に選ぶ食材

友安さんが食材を選ぶ際に大切にしているのは、食材が持つ本来の味や鮮度。実際に生産現場へ足を運び、どんな環境で育ち、どんな味わいを持つのかを、自身の目と舌で確かめてきた。
岡村養豚場とは開店当初からの付き合いで、今年で22年。「農場で豚がのびのびと走り回り、丁寧に育てられているんですよ」と友安さん。標高の高い極楽寺の自然豊かな環境で育てられた豚は、脂にしっかりとした旨味がありながら、後味は驚くほどすっきりとしている。

岡村養豚場の『豚肉のソテー 蔵ソース』。佐伯醤油をベースにした特製ソースが、旨味豊かな豚肉の味を引き立てる

添えられている野菜は、廿日市産のカブ、きのこ屋本舗のあわび茸

食材の特性に合わせて切り方を変えたり、硬い部位はミンチにして団子にしたりと、食材を余すことなく使い切る工夫も欠かさない。生産者から直接仕入れるほか、JA産直ふれあい市場 「よりん菜」でも野菜を購入しており、地元食材を使うことを大切にしている。

野生味あふれる、前川農園の無農薬野菜

長年付き合いのある前川農園の野菜は、無農薬栽培ならではの「野生的」な味わいが特徴。「苦みとか甘みとか、野菜本来の味がどっと出てくる感じがします」と友安さん。一般的な栽培の野菜と比べると、無農薬野菜は味の輪郭がはっきりしており、素材そのものの力強さを感じられるという。その野生的な味を活かすため、料理は薄味に仕上げている。

前川農園の米と里芋、廿日市産の銀杏と小松菜を使った『黒楽御飯鍋(くろらくごはんなべ)の釜炊きごはん』

前川農園の米「ヒノヒカリ」は、無農薬で育てるため虫食いが見られることもあるものの、その分安全で美味しい。粒がしっかりとしており、「お米そのものの味がしっかり主張している」と食べた人からも評判だ。

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生産者と食べ手を結ぶ役割

友安さんは、生産者のもとへ直接足を運び、栽培・飼育環境を自身の目で確かめることを重視している。「現場へ行くのと行かないのとでは大違い。どんな状況で育てていらっしゃるのか、現場を見ることで料理への理解が深まるんです」。

「生産者さんも、どこの誰がどんな料理をしているか、どういうふうに料理されて食べられているのかっていうのが分からない」。お客様の「美味しかった」という声を生産者へ届けることで、次への励みにつながればという思いもある。

メニューは月替わりのコース料理のみで提供している。旬の食材を最大限に活かすため、生産者に状況を確認しながらメニューを考案する。食材は、コースの価格や予約時のリクエストに応じて提供しているといい、希望がある場合は予約時のリクエストが必須だ。

季節の彩りが広がる中庭を眺めながら、食事の時間を楽しめる母屋の一室

「食は命ですから。美味しい食材を作る農家を応援したい」と友安さん。客室、器にもそれぞれこだわり、料理を通じて地元食材の価値を伝えていきたいという強い思いを持つ。

築150年の蔵でいただく旬菜 蔵での食事は、廿日市の自然と、その恵みを守り育てる人々の思いを、五感で味わえる特別な時間となる。

店名旬菜 蔵
所在地廿日市市上平良1373-2
アクセスJR宮内串戸から車で5分
定休日火・水・木曜日